空家等対策の推進に関する特別措置法|最新の改正解説

空家を適切に管理せず放置し、屋根や外壁の破損、建物の傾き、樹木の越境、ごみの堆積などが進むと、「管理不全空家等」や「特定空家等」として市区町村から指導や勧告を受ける可能性があります。

とくに注意したいのが、2023年12月に施行された改正空家法です。これまでの「特定空家等」に加えて、その一歩手前にあたる「管理不全空家等」も行政措置の対象となりました。

勧告まで進むと固定資産税等の住宅用地特例から外れる可能性があり、特定空家等では、さらに命令、過料、行政代執行へ進む場合もあります。

この記事では、空家等対策の推進に関する特別措置法の内容について、国土交通省の資料や実際に特定空家等への措置を公表している姫路市の事例をもとに、具体的に解説します。

目次

空家等対策の推進に関する特別措置法とは

「空家等対策の推進に関する特別措置法」は、一般に「空家法」「空き家対策特措法」などと呼ばれる法律です。

2014年に制定され、2015年に全面施行されました。その後、空き家の増加や老朽化への対応を強化するため、2023年に大幅な改正が行われています。

法律の目的は、危険な空き家を取り壊すことだけではありません。

地域住民の生命・身体・財産を守り、生活環境を保全するとともに、空き家の活用を促進することまで含まれています。

また、現在の空家法第5条では、空家等の所有者または管理者について、周囲の生活環境に悪影響を及ぼさないよう適切な管理に努めることに加え、国や地方公共団体が行う空き家施策に協力するよう努めることも定めています。

出典:e-Gov法令検索「空家等対策の推進に関する特別措置法」第1条・第5条

全国の空き家は900万戸に達している

空家法が重要性を増している背景には、空き家そのものの増加があります。

総務省の2023年住宅・土地統計調査によると、全国の空き家は900万戸。空き家率は13.8%となりました。

このうち、賃貸用・売却用・二次的住宅を除く空き家は385万戸です。

ただし、ここでいう住宅・土地統計調査上の「空き家」と、空家法上の「空家等」は定義が完全に同じではありません。

統計上の戸数を、そのまま空家法の対象件数として読むことはできない点には注意が必要です。

出典:総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査」

法律上の「空家等」はどのように判断される?

空家法第2条では、「空家等」を、居住その他の使用がなされていないことが常態となっている建築物や附属工作物、その敷地などと定めています。

対象は建物本体だけではありません。門、塀、敷地内の立木なども含まれます。

では、「何か月住んでいなければ空家等になる」という明確な期限があるのでしょうか。

国の基本指針では、建物への人の出入り、電気・ガス・水道の使用状況、所有者による利用実績、管理状況などから客観的に判断するとしています。

そのうえで、「おおむね年間を通して使用実績がないこと」は一つの判断基準とされています。

したがって、「1年間空けたら自動的に空家法上の空家等になる」という意味ではありません。使用実態を含めて市区町村が個別に判断します。

出典:国土交通省・総務省「空家等に関する施策を総合的かつ計画的に実施するための基本的な指針」

2023年の空家法改正で何が変わったのか

2023年12月13日に施行された改正空家法では、「危険になってから対処する」だけではなく、危険な空き家になる前から管理・活用を促す仕組みが大幅に強化されました。

主な改正内容
管理不全空家等の創設放置すれば特定空家等になるおそれがある空き家について、市町村が指導・勧告できるようになった
住宅用地特例の対象見直し勧告を受けた管理不全空家等の敷地も住宅用地特例の対象外となる
空家等活用促進区域一定の区域で、空き家の用途変更や建替えを促進する仕組みを設けた
空家等管理活用支援法人市町村が一定の法人を指定し、相談や管理・活用などを支援できる仕組みを設けた
緊急代執行災害などで緊急性が高く、通常の命令手続きを経る時間がない場合に対応できる制度を設けた
財産管理制度の活用強化所有者不明・相続人不明などの空き家について、市町村長が裁判所に財産管理人等に関する請求を行える仕組みを整えた

なかでも空き家所有者への影響が大きいのが「管理不全空家等」の新設です。

国土交通省の調査では、改正法が施行された2023年12月13日から2025年3月31日までに、全国で管理不全空家等に対する指導が3,211件、勧告が378件行われています。

改正法施行から約15か月半で3,000件を超える指導が行われており、すでに実務で活用されている制度です。

出典:国土交通省「令和5年改正空家法に基づく取組が広がる~令和7年3月31日時点調査~」

管理不全空家等と特定空家等の違い

空き家を所有している人がまず理解しておきたいのが、「管理不全空家等」と「特定空家等」の違いです。

項目管理不全空家等特定空家等
位置づけ放置すれば特定空家等になるおそれがある状態法律が定める危険・衛生・景観・生活環境上の問題が生じている、または生じるおそれがある状態
法定措置指導 → 勧告助言・指導 → 勧告 → 命令 → 代執行等
住宅用地特例勧告を受けると対象外勧告を受けると対象外
命令空家法第13条には規定なしあり
命令違反の過料なし50万円以下
行政代執行空家法第13条には規定なしあり

管理不全空家等は、分かりやすくいえば「特定空家等になる前の段階」です。

ただし、すべての空き家が必ず「通常の空き家 → 管理不全空家等 → 特定空家等」という順番を通るわけではありません。

すでに著しく危険な状態であれば、市町村が特定空家等に該当すると判断することがあります。

出典:e-Gov法令検索「空家等対策の推進に関する特別措置法」第13条・第22条

具体的にどんな状態になると管理不全空家等・特定空家等になる?

「古い家なら指定される」「外壁にひびが入ったら指定される」といった全国一律の単純な基準はありません。

国のガイドラインを踏まえながら、建物や敷地の状態、周辺への影響、立地条件などを市区町村が総合的に判断します。

なお、一般には「指定」と表現されることが多いものの、空家法自体が全国共通の「指定証」を発行するような手続きを定めているわけではありません。法律上の要件に該当すると市町村が判断し、それぞれの措置を行います。自治体によっては「認定」という表現を使用しています。

管理不全空家等になる可能性がある状態

管理不全空家等は、現時点ですでに倒壊寸前である必要はありません。

適切に管理されておらず、そのまま放置すれば特定空家等になるおそれがある状態が対象です。

確認箇所管理上問題となり得る状態の例
建物全体建物に傾きがある、構造部材に腐朽や破損がある
屋根・外壁屋根材や外壁材が剥がれている、破損や変形がある
窓・開口部窓ガラスや扉が壊れ、不特定の人が侵入しやすい
排水設備排水設備が破損している、水たまりや悪臭の原因となっている
敷地ごみが散乱・堆積している、雑草が繁茂している
立木枝が道路や隣地にはみ出している、幹が腐朽している
動物・害虫動物の棲みつきや害虫の発生につながる状態になっている

ただし、この表のどれか一つに当てはまれば、自動的に管理不全空家等になるわけではありません。

重要なのは、「適切な管理が行われていないこと」と「そのまま放置すれば特定空家等になるおそれ」があるかどうかです。

出典:国土交通省「空家法の基本指針」「管理不全空家等及び特定空家等に対する措置に関するガイドライン」

特定空家等は法律上4つの類型がある

特定空家等は、空家法第2条第2項に基づき、おおむね次の4類型に整理できます。

類型具体例
著しく保安上危険となるおそれがある建物が大きく傾いている、屋根や外壁が崩落・飛散するおそれがある、擁壁が危険な状態にある
著しく衛生上有害となるおそれがあるごみや汚物による悪臭・害虫、排水設備の破損、石綿の飛散につながる状態など
著しく景観を損なっている適切な管理が行われず、外観の著しい破損・汚損などによって周囲の景観を大きく損なっている
その他、周辺の生活環境を守るため放置することが不適切樹木が道路をふさぐ、動物の棲みつきによる悪臭・騒音、不特定者が侵入できる状態など

ここで重要なのは、「すでに事故が起きていること」が条件ではない点です。

たとえば、屋根材がまだ道路に落ちていなくても、そのまま放置すれば落下して周囲に危害を及ぼすおそれが高い状態であれば、特定空家等として措置の対象となる可能性があります。

出典:e-Gov法令検索「空家等対策の推進に関する特別措置法」第2条第2項

姫路市の実例を見ると「どこまで悪化すると勧告されるか」が分かる

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この記事を書いた人

アップライト合同会社代表社員。実業之日本社で雑誌・書籍編集社として勤務後、沖縄で不動産業(宅地建物取引業)開業。約10年経営して大阪に戻る。なみのおと音楽教室およびアップライト合同会社不動産事業部を運営。宅建業免許:大阪府知事(1)第67271号

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